■ 20ミリシーベルト:子供に200倍の被曝を認める文科省
ICRP(原発推進派の国際組織)は、年間1000マイクロシーベルトを被曝許容量としているが、今のような「緊急時」には20000マイクロSv(20ミリSv)まで認めるべきだと日本政府に働きかけてきた。
報道によると、文部科学省は4月10日、福島県の幼稚園や学校に、大気中の放射線量のモニタリングデータに基づき、児童・生徒たちの校庭活動での被曝を年間20ミリシーベルトまで許可する方針を検討している。
日本政府はこれまで、水・食品の暫定基準など、国際的基準よりも20~30倍高いゆるい規制値をなし崩し的に決めてきたが、今回は子供たちの年間被曝量基準を、ICRP通常時基準の20倍、ECRR(環境・人命重視派の国際組織)基準の200倍にしてしまうというものだ。
■ 25人に1人を殺す基準
20ミリシーベルト/年とはどういう放射線量か。もともと日本では原発作業員など極めて特殊な職業の人に年間50ミリSvまでを許容してきたが(現在作業員は250ミリSvにまで許容されているが)、それと大して違わない被曝量を子供に認めるということは、どんな事態をもたらすのか。
基本的に放射能の被害は確率的被害であり、ここからは絶対に安心という値など存在しない(※この点については別の記事で詳しく述べましたが、他にも説明している人が何人かおられます)。京都大学の小出裕章先生によると、年間1000マイクロSvの確率的被害とは、数年~数十年の間に、1万人中4人が被曝によるガンにかかる、というものである。つまりICRPの基準とはそのレベルの確率的被害までは安全ということにしようという意味だ。30歳くらいの大人であれば、年間20ミリ(20,000マイクロSv)という基準は、125人に1人が被曝による癌で死ぬ、という確率的被害を認める値である。
しかしこれは成人についての確率的被害なので、幼児・未成年の場合はこれよりもさらに発癌率は高くなる。小出先生によれば概算で子供は5倍の影響を受けるため、年間20ミリSvをあびてしまえば、25人に1人の子供が将来ガン死することになる。
なお米国の「社会的責任のための医師会」も、この20ミリSv/年という基準は200人に1人、2年間だと100人に1人をガン死させると言っています。
※この記事を書いた時点では、大鬼は20ミリシーベルトの確率的被害を、1000人に1人であると思っていましたが、これでは被害をかなり過小評価していると考え修正しました。
■ 体内被曝を含めれば恐ろしい被曝量に
大気中の放射線量で判断するということは外部被曝量しか計算しないということだ。しかし本当の危険は体外被曝ではなくて放射性物質を吸い込んだり飲んだり食べたりすることで起こる体内被曝であることは、当ブログでも繰り返し説明してきた。空間からの外部被曝で20ミリSv付近に達する頃には、体内からそれとは比べものならないほど大量の被曝を被っている。リスクの計測方法がそもそも間違っているので、致命的な「想定外」の事態を招くことは明らかである。
■ 緊急時用の基準という理不尽な発想
そもそも「緊急時」だから通常時よりもあまい基準を適用するという発想はおかしい。私たち住民の立場から言えば、緊急時こそ厳格な基準が求められる。というか、被曝量の基準が問題になるのは常に緊急時である。そして緊急時だからといって人間の放射能耐性が増えるわけでもない。ではなぜ原発推進派は「緊急時」基準といったバカげたことを強引に決めようとしているのか。動機は非常に分かりやすい。反原発世論を抑え込み厄介事を回避するために、基準をゆるめて被害をないものにする、という話である。彼らはことあるごとに定説はないとかいろいろと理屈をならべるが、行動パターンを見れば、原発利権を守るために人命を犠牲にしていることは明らかである。
■ 子供たちを守って!文科省に意見を書いてください
20ミリSvという基準が既成事実化すれば、他の地域の学校にも適用されていくだろう。こんなことを認めてはいけない。以下のフォームに意見を書いて子供たちの命を守ろう。地域の学校にも声を伝えよう。
文科省の政策評価に関するご意見フォーム
関連記事
原発事故ってもケセラセラ?税金で尻ぬぐいさせる原子力損害賠償法
根本から間違っていた計算方法:放射能安全基準をめぐるICRPとECRRの対立
発表されているヨウ素131とセシウム137の数値を並べてみた